ECとは?意味・概要・EC通販ビジネスの消費者メリット・事業者メリットを解説!
ECとはなにか?普段なにげなく利用していても、いざ市場へ参入するとなると、意外に全体像を把握できていないことに気付く方は少なくありません。
そんな方に向け、意味・概要・ECを取り巻く市場環境から、利用する消費者・ビジネスを展開する事業者のメリットまで、ECとはなにかを解説していきます。
ECとはインターネットを活用した商取引のこと
ECとは「Electronic Commerce」の略称です。日本語では「電子商取引」と訳され、インターネットを活用した電子的な商取引のことを意味します。「Eコマース」「インターネット通販」「ネットショッピング」と呼ばれることもあり、オンラインでの受発注が特徴です。参考までに、OEDCが定義する広義のECを紹介しておきましょう。
”物・サービスの売却あるいは購入であり、企業、世帯、個人、政府、その他公的あるいは私的機関の間で、(インターネットを含む)コンピューターを介したネットワーク上で行われるもの。物・サービスの注文はこれらのネットワーク上で行われるが、支払い及び配送はオンラインで行われてもオフラインで行われても構わない。”
ECと通信販売は違う?
ネット通販などと呼ばれることもあるECですが、厳密には「通信販売」とイコールではありません。なぜなら、通信販売の本来の定義は「郵便や電話、ファクシミリ、インターネット等で購入の申し込みを行う取引方法」だからです。
つまり、ECは「通信販売のうちの一種類」であり、モノ / サービスの受発注をオンラインで行うものに限定されます。また、税金の支払いなど、政府機関サービスに個人が対価を支払うGtoC(Government to Consumer)も、ECに含まないことが一般的です。
ECとは?歴史・種類
ECは、IT技術の進化 / インターネットの普及とともに歴史を重ねてきました。日本でECが本格化したのは、国内初ECモール「楽天市場」登場の1997年頃から。2000年には「良品計画」「ユニクロ」が相次いでEC市場に参入し、「モノタロウ」「カウネット」などのEC専業企業も登場しました。
これは、モール型EC、ASPサービスなど、手軽にEC市場へ参入できる環境が整いつつあったこと、および、インターネット利用の普及率が飛躍的に高まったことが理由です。
また、同じく2000年11月には、オンライン書店としての「Amazon」が日本参入。取扱商品を増やしながら急成長するAmazonに呼応する形で、国内EC市場も拡大を続け、ECの業態 / 種類も多様化しました。主なECの種類を紹介しておきましょう。
BtoC EC(Business to Consumer)
BtoC ECとは、企業と消費者間における電子商取引のこと。もっともイメージしやすい種類のECだといえるでしょう。BtoC ECは、さらに「物販系」「サービス系」「デジタル系」という3つの分野に分類できます。
BtoC ECの分野 |
主な取り扱い商材 |
物販系 |
食品、飲料、生活家電、AV / PC機器、音楽ソフト、化粧品、 医薬品、雑貨、インテリア、衣料、自動車など |
サービス系 |
旅行、飲食、チケット販売、金融、美容 / 理容など |
デジタル系 |
電子書籍、音楽配信、動画配信、オンラインゲームなど |
BtoB EC(Business to Business)
企業間における電子商取引が、BtoB ECです。建設・不動産業から、製造、情報通信、運輸、卸売、小売、金融、サービス業まで、幅広い業種を含むことが特徴。一般消費者には馴染みがありませんが、実はBtoC ECを遥かに上回る市場規模を持つこともBtoB ECの特徴です。
DtoC EC(Direct to Consumer)
メーカーが代理店などを通さず、直接消費者に販売する形態の電子取引が、DtoC ECです。メーカーの公式サイトに、ダイレクトショップへのリンクがあるのを目にした方も多いでしょう。この分野で先行していたのはアパレル・化粧品だといわれていましたが、食品や日用品メーカーなど、幅広い業種でのEC参入が目立ってきています。
CtoC EC(Consumer to Consumer)
フリマアプリ / ネットオークションを活用した個人間電子取引を、CtoC ECといいます。フリマアプリが登場した2012年頃から急速に市場規模を拡大させているのが特徴。大きくは中古品の二次流通、ハンドメイド商品の販売に分類できますが、スキル販売などのサービス分野も拡大しつつあります。
ECとECサイトの関係
ここまでで、意味・種類を含めたECの概要を解説してきましたが、よく耳にする「ECサイト」とECの関係が気になっている方も少なくないでしょう。
ネットショップと呼ばれることもある「ECサイト」とは、電子商取引(EC)機能を持つWebサイトのこと。商品を展示して販売する実店舗と同じように、オンラインで商品を閲覧・購入できる仕組みを持つのがECサイトです。
ECサイトを開設する方法は大きく2つ。モール型大手ECサイトに出店する方法、そして自社独自のECサイトを開設する方法です。
ECサイトについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ECサイトとは?種類・構築方法や必要な機能・運営業務・集客方法を解説!
ECの市場規模 / 現状と将来性
ECとはなにか?大まかな概要は理解できた。しかし、市場に参入する価値はあるのか?気になっている企業担当者の方は多いはず。そんな方に向け、EC市場規模の現状、そして将来性について解説していきましょう。以下は、2013年から2021年まで、BtoC EC市場規模の推移をグラフ化したものです。
パンデミックの影響でサービス系分野が落ち込んだ2020年を除き、BtoC EC市場規模は右肩上がりに拡大を続けていることがわかります。8年間で市場規模はおおよそ2倍になっており、サービス分野の復調を考慮すれば、今後のさらなる成長も充分期待できるでしょう。
スマートフォンからの利用が主流
ECサイトを利用するユーザーのデバイスは、スマートフォンが主流です。物販系BtoC ECの調査結果だけを見ても、それは明らか。2015年には全体の1/4(27.4%)に過ぎなかったスマートフォン利用率は、2020年に過半数(50.9%)を突破しています。
この調査結果は、普段ECを活用している方なら容易に想像できるはず。つまり、これからEC市場に参入するのなら、スマートフォン / レスポンシブ対応は必須。Googleが「スマートフォンファースト」を掲げるように、検索結果からの顧客流入を狙うためにも、スマートフォン対応は必須です。
ECの潜在的成長余地は大きい
右肩上がりの成長を続けるEC市場ですが、まだまだ潜在的な成長余地は充分にあります。たとえば、物販系BtoC ECの場合、大きくなったとはいえ、市場全体から見たEC化率は「わずか8.78%」です。
EC市場の競争は激しいといわれていますが、EC化率を考慮に入れれば、工夫次第で大きな成果を得られるはずです。
顧客体験を重視したECの進化が加速
ただし、現実としてEC事業者間の競争が激化していることも事実。競争を勝ち抜くには、新規顧客の獲得はもちろん、既存顧客の囲い込みが必要。「顧客体験を重視した方向性」へと、ECが進化しているのはこのためです。
具体的には、対面で接客できないECの弱点を補う「レコメンド」「AIチャットボット」「オンライン試着」の導入。ECサイト、SNS、実店舗など、オンライン / オフライン問わず、あらゆる顧客との接点を販売に利用する「オムニチャネル戦略」などが挙げられます。消費者の動向を反映しながら、ECはさらなる進化を続けていくはずです。
EC通販を利用する消費者メリット
今後のさらなる成長が期待できるEC市場ですが、その原動力は「EC通販を利用する消費者が大きなメリットを感じている」ことです。どのような価値を提供すれば、消費者が受け入れてくれるのか?考えるためにも、消費者のメリットを把握しておくことが重要。簡単に整理しておきましょう。
時間 / 場所を問わない買い物
店舗に出向かなくても「時間 / 場所を問わずに買い物できる、指定した場所まで届けてくれる」は、EC通販を利用する消費者にとって最大のメリット。これは、スマートフォン経由でのEC利用が年々増加していることからも明らかです。思い立ったときに、いつでもどこでも買い物できる利便性は、EC通販の強みです。
商品 / サービスの比較が容易
オンラインで簡単に商品を検索できるEC通販は「各ショップの商品 / サービスを容易に比較できる」という消費者メリットがあります。商品価格をショップごとに比較できることはもちろん、世界中のショップで欲しい商品を検索可能。送料やポイントの有無など、サービス内容を比較した上で購入するショップを選べます。
豊富な決済手段
EC通販の決済手段は実店舗よりも豊富な場合が多いため、消費者は自身のニーズにあわせた方法を選べるメリットが得られます。コンビニ払い、後払い、代引きなどを利用すれば、クレジットカードを持てない年齢でも買い物が可能。多彩な決済手段は、消費者の購入に対するハードルを下げることにも役立ちます。
ECの進化を享受
消費者は、顧客体験を重視したECの進化を享受できるメリットがあります。たとえば、オムニチャネル展開するネットショップなら、オンラインで購入 / 決済した商品を、仕事帰りに最寄りの実店舗で受け取るなどが可能。次々に登場する、利便性を高めた新たな通販方法を利用できます。
EC通販ビジネスを展開する事業者メリット
それでは、消費者に価値を提供する側のEC事業者は、市場参入することでどのようなメリットを得られるのか?こちらも簡単に整理しておきましょう。
実店舗不要 / 低コスト / 世界市場でのビジネス展開
実店舗の不要なEC通販は、低コストでビジネスをスタートできる、オンラインならではの世界市場を対象にしたビジネスを展開できるメリットがあります。EC通販なら、商材を準備してネットショップを開業するだけ。ビジネスの成長にあわせて実店舗を併用するなど、ビジネスを柔軟に展開できることもメリットです。
莫大な初期費用や人件費のかかる実店舗開業では、こうはいきません。オンラインの仮想店舗であるネットショップと異なり、実店舗は商圏も限られます。
24時間365日の営業
営業時間内しか販売できない実店舗と異なり、EC通販は24時間365日、オーダーを受け付けられるメリットがあります。思い立ったときにいつでも注文できる、受注できるEC通販なら、顧客の取りこぼしを最小限に抑えられるでしょう。
顧客データの収集
顧客の基本情報、購入履歴、アクセス状況など、詳細な顧客データを収集できることも、オンラインならではのEC通販事業者のメリットです。解析ツールを利用すれば、よく見られている商品、ページごとの滞在時間、離脱したポイントなど、ネットショップ内での顧客行動も収集可能。ただし、モール型ECサイトの場合、取得できる顧客データは限られます。
データを根拠にした改善施策が容易
ネットショップで収集した顧客データを分析することで、データを根拠にした精度の高い改善策を実施できるメリットが得られます。たとえば、顧客の購入履歴をもとに、アップセル / クロスセルを促す、プロモーション施策の参考に利用するなどが考えられます。
カートに商品を入れたまま、いわゆるカゴ落ちが多い場合にフォームを修正してみる、リマインドの仕組みを作るなど、ネットショップ自体の改善施策にも役立ちます。
EC市場参入のポイント
参入を検討する価値のある、魅力的なEC市場ではありますが、商品を閲覧できるだけのネットショップでは成功できません。では、EC市場へ参入する際に考慮しておきたいポイントとはなにか?要点を簡単に解説しておきましょう。
コンセプト / 提供価値 / 顧客体験
もっとも重要なことは、ネットショップの「コンセプト」「提供価値」「顧客体験」を明確にすること。具体的には、どのような商品を、どのような顧客(ターゲット)に販売するのか?どのような価値・体験が得られるのか?ネットショップとして一貫した方針を決めることです。
なぜなら、コンセプトやターゲットが不明瞭なままだと、だれからも興味を持たれない中途半端なネットショップになってしまうからです。これは、EC通販に限らないマーケティングの基本。商品ありきで考えるのではなく、だれにどのような価値を提供するのかを考えることが重要です。
集客施策
「コンセプト」に次いでEC通販で重要なことは「集客施策」です。なぜなら、開業したばかりの自社ECサイトは、人通りのない郊外に路面店を出店するようなものだから。ネットショップさえ開業すれば、顧客が集まってくるというものではありません。
ネット広告、SNSなど、ECの集客施策はさまざまですが、近年ではブログ記事を発信し、検索結果からの流入を狙うコンテンツマーケティングに取り組む事業者も。どのような施策をどのように実施していくのか?方針を明確にしておくことが重要です。
ECとは?意味・概要・メリットを紹介しました
「ECとはなにか?普段なにげなく利用していても、いざ市場へ参入するとなると、意外に全体像を把握できていないことに気付いた」そんな方に向け、意味・概要・ECを取り巻く市場環境から、利用する消費者・ビジネスを展開する事業者のメリットまで、ECとはなにかを解説してきました。
EC市場への参入を検討する際は、どうしてもECサイトの種類や構築方法を気にしてしまいがちです。しかし、市場の全体像を把握し、勝算のあるコンセプトを決めることが先決。そのためには、トレンドの移り変わりの早いEC市場を、常にウォッチしておくことが重要です。