産直ECとは?概要・仕組み・生産者のメリット・課題・代表的なサービスを紹介!
2020年に急成長を遂げた産直ECとはなにか?生鮮食品に携わる生産者なら気になっているはず。
そんな方に向け、概要・仕組み・生産者のメリット・代表的なサービスから課題まで、産直ECの全体像を解説していきます。
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産直ECとは
「産直」とは、卸業者や小売店を介さず、生産者と消費者が生鮮食品を直接売買する「産地直送」や「産地直売」の略称のこと。つまり「産直EC」とは、生産者と消費者が売買取引する場を提供するECプラットフォームのことです。
産直という考え方は1960年後半頃には存在しており、生産地に近い直売所や、道の駅などで生鮮食品を直売することは珍しくありませんでした。こうした直売所を、ECプラットフォームに置き換えたものが「産直EC」だと考えればわかりやすいでしょう。
このため、多くの産直ECは「産直のコンセプト」を継承しています。具体的には「流通に乗らない規格外品を販売したい、中間マージンを削減して安く売りたい生産者」と「美味しい生鮮食品を安く買いたい消費者」が直接取引することです。
産直ECの仕組み
産直ECの仕組みは、楽天などに代表されるECモールとも、ユニクロに代表される自社ECサイトとも異なります。
生産者側から見た、産直ECにおける取引の流れは、おおむね以下の通りです。
- 産直ECに生産者登録
- 販売したい生鮮食品を産直ECに出品(値段、販売数量は自由に設定)
- 産直EC経由で消費者から受注
- 生産者は受注した生鮮食品を梱包して消費者へ発送(送料は消費者負担)
- 代金は手数料を差し引いた上で産直ECから生産者へ入金
このように、産直ECでは決済や取引にプラットフォームを利用するものの、商品のやり取りは生産者 / 消費者間で行われることが基本。
商品である生鮮食品を「出品」することも産直ECの特徴です。
自社EC / ECモールとの違い
つまり、産直ECと自社EC / ECモールとの違いは「ショップがあるか / ないか」です。独自のネットショップを構築する自社ECはもちろん、ECモールも「モール内に自社ショップを出店」しますが、上述したように産直ECは「出品」するだけ。当然、ショップを持たない産直ECは、維持費を含むランニングコストも最小限に抑えられます。
どちらかというと、産直ECは「フリマサイト」「マッチングサイト」や、カーシェアなどの「シェアリングエコノミーサイト」などに近いといえるでしょう。
自社ECについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:自社ECとは?メリット・デメリット・ECモールとの違い・成功のポイントを解説!
ECモールについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ECモールとは?特徴・種類・自社ECサイトとの違い・主要ECモールを紹介!
産直ECの市場規模
それでは、注目の高まる産直ECは、どのくらいの市場規模を持つのでしょうか。株式会社富士経済の調査結果によると、道の駅などを除き、ICTを活用した産地直結型農業ビジネスの市場規模は、2020年の実績で約771億円。そのうち、産直ECによるものは約40億円でした。
注目すべきは、産直ECの成長率。パンデミックによって外食の機会が激減した消費者の利用が急増し、2019年比で20倍もの成長を遂げているのです。
ただし、2021年以降の調査結果が報道されていないため、パンデミック収束以降も継続的に成長を遂げられているのか?実際のところは判断できません。産直ECが成長産業として定着していくのかは、今後の状況を見守っていく必要があります。
参考:株式会社富士経済
生産者から見た産直ECのメリット
概要・仕組みを把握できたところで、産直ECを利用することでどのようなメリットが得られるのか?生産者から見た具体的なメリットを紹介していきましょう。
消費者からのフィードバックを得られる
卸業者や小売店の介在する卸売の場合、エンドユーザーとの接点を持つことは困難ですが、産直ECなら消費者の声というフィードバックを得られます。これは、産直ECに「問い合わせ / レビューに利用できるコミュニケーション機能」があるから。実際、産直ECの代表といえる「ポケットマルシェ」では、自社サービスを「産直SNS」と呼んでいるそうです。
消費者からのリアルなフィードバックが得られれば、これまで気付かなかった商品の良い点 / 悪い点がわかります。生産する上での改善につながることもあるでしょう。ただし、小規模生産者の場合はコミュニケーション自体が大きな負担になってしまうことも。本業である「生産」を圧迫しないように注意が必要です。
販路拡大によるリスクマネジメント
登録して出品するだけの産直ECは、ワークフローを大きく変えることなく低コストで生産者が参入できるECプラットフォームです。これは、卸売をメインにする生産者にとって、容易に販路を拡大できる(販売チャネルを増やせる)ことにほかなりません。
それこそ、産直のコンセプトでもある「流通に乗らない規格外品を販売する」ためには、産直ECは最適の販売チャネル。小口注文が中心となる産直ECでは、大きな売上は望めないかもしれませんが、複数の販売チャネルを確保できれば、いざというときのリスクマネジメントにも役立ちます。
事務コストを比較的抑えられる
産直ECの場合、販売に関連する受注管理、伝票作成、決済、振り込みはプラットフォーム側が代行してくれるため、事務コストを比較的抑えられるメリットが得られます。加えて、ショップが不要なため、初期費用やランニングコストを抑えられることもポイント。
手数料を差し引かれることは事実ですが、トータルで見れば、産直ビジネスのなかでも、運用コストをもっとも抑えられるのは「産直EC」だといえるでしょう。
生産者から見た産直ECのデメリット
生産者と消費者をマッチングさせることで数々のメリットを生み出す産直ECですが、デメリットや課題がないわけではありません。
以下からは、生産者から見た産直ECのデメリットを紹介していきます。
売上入金までのタイムラグ
月末締め翌月末支払い、翌々月10日払い(60〜70日サイト)など、産直ECでは売上入金までにタイムラグが発生します。一般的な法人取引と異なり、現金化までが早い生鮮食品生産者にとっては、産直ECを活用するうえで大きなデメリットに感じられるでしょう。
個別販売 / 梱包 / 出荷の業務負担
個別販売による梱包 / 出荷といった業務負担増も、生産者から見た産直ECのデメリットです。
一般消費者とのマッチングが基本となる産直ECは、受注が多くなればなるほど、小口の個別販売 / 梱包 / 出荷量が増えます。ワークフローに大きな違いがないとはいえ、一度に大量出荷すれば済む卸売に比べ、業務負担が増すことは間違いありません。
代表的な産直ECプラットフォーム
それでは、産直ECを具体的にイメージできるよう、以下から代表的な産直ECプラットフォームをいくつか紹介しておきましょう。
ポケットマルシェ
画像出典:ポケットマルシェ
「ポケットマルシェ」は、岩手県花巻市に本店を持つ、株式会社雨風太陽が運営する越境ECサイトです。日本全国の生産者が出品する商品数はおよそ16,000品目。人気商品、規格外、夏野菜などでカテゴリー分けされており、コミュニケーション機能で消費者とつながることも可能。販売手数料は売上の20%。サイトと提携する宅配便も利用できます。
食べチョク
画像出典:食べチョク
「食べチョク」は、東京都港区に拠点を持つ株式会社ビビッドガーデンが運営する産直ECサイト。全国7,500軒以上の生産者が参加しており、70万人以上のユーザーから利用される日本最大級の産直ECです。手数料は顧客支払い総額の8〜18%。一般消費者向けだけでなく、法人向け、飲食店向けサービスを展開していることも特徴です。
産直アウル
画像出典:産直アウル
「産直アウル」は、東京都墨田区に本社を構えるレッドホースコーポレーション株式会社が運営する産直ECサイトです。約6,500品目を取り扱っており、生鮮食品だけでなく加工食品の出品、わけあり品の出品も可能。販売手数料は公開されていませんが、通常の50%OFFとなるヤマト便で発送できます。
やさいバス
画像出典:やさいバス
「やさいバス」は、静岡県牧之原市に拠点を構えるやさいバス株式会社が運営する産直ECサイトです。利用料が不要、消費者とコミュニケーション可能などは、他社サービスと同様ですが、ユニークなのは出荷方法。バス停と呼ばれる集荷場に生鮮食品を持ち込むスタイルが採用されています。販売手数料は売上の15%です。
産直ECの課題
パンデミックを機に市場規模の拡大した産直ECですが、事業撤退してしまったサービスも少なくありません。これは産直ECに生産者側だけではない、利用者側から見た課題があるからだと考えられます。
つまり産直ECの成長、サービスの定着が進むかは、生産者 / 消費者双方の課題をクリアできるかにかかっています。参考までに、株式会社YAYによる産直ECを利用する消費者のアンケート結果を紹介しておきましょう。
品質担保 / 消費者とのミスマッチ
「産直ECで食材を購入して失敗した経験があるか」という質問に対し、61.7%の利用者が「ある」と回答しています。
その理由は「画像を見て注文したがイメージと違った、サイズ感が違った」「期待したほど美味しくなかった」「好みの味ではなかった」など。失敗の理由の多くは、生産者の出品する生鮮食品と消費者の「ミスマッチ」だと思われます。
画像出典:PRTIMES
原因としては、消費者側が産直ECのコンセプトを理解しておらず、通常の「通販サイト」だと考えていること。産直ECプラットフォーム側で、生鮮食品の品質を担保することが事実上不可能であることが挙げられるでしょう。
ポケットマルシェでは、出品者の登録時に「生業としている生産者」であることの証明を求めており、品質担保へ取り組む姿勢は見られています。しかし、生産者と消費者間での意識のズレを修正することは、困難だといわざるを得ません。
産直ECプラットフォームへの不満
産直ECプラットフォームに不満を持つ利用者も多いようです。「利用する産直ECを変えた経験があるか」という質問に対し、約半数の50.3%が「ある」と回答。そのうちの65.8%が「不満があった」ことを理由にしており、不満の75.4%は「産直ECサイト」に集中しています。
画像出典:PRTIMES
その理由は「ほかの産直ECが安かった」「在庫切れで買えなかった」「問い合わせ対応が良くなかった」など。この結果からも、産直ECを「通常の通販サイト」だと考えている利用者が多いと推察できます。
産直ECの全体像を紹介しました
2020年に急成長を遂げた産直ECとはなにか?自分も取り組むべきなのか?気になっている生産者の方に向け、概要・仕組み・生産者のメリット・代表的なサービスから課題まで、産直ECの全体像を解説してきました。
いくつかの課題はあるものの、消費者と簡単に直接取引できる産直ECは、生産者にとっても有益なサービスです。ポイントとなるのはプラットフォーム選び。各サービスの特徴を比較し、自分にあった産直ECプラットフォームを選定しましょう。
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