中国越境ECへ参入する方法|中国越境ECの市場規模・特徴・注意点も解説!
マーケットを拡大するため越境ECに取り組んでみたい。なかでもパイの大きな中国に興味がある。しかし、越境ECをはじめる方法も中国EC市場のこともわからない。
そんな企業担当者の方に向け、中国越境ECへ参入する方法を紹介!前提条件として知っておきたい中国越境ECの市場規模・特徴・注意点も解説していきます。
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魅力的な中国越境EC市場
日本はもちろん、世界中のEC事業者にとって中国は魅力的な市場です。中国のEC市場規模は世界一で、全世界のBtoC EC流通金額の約半数を占めるのが中国です。
2021年の実績では、全世界の市場規模約4兆9,200億ドルに対し、中国の市場規模は2兆4,886億ドル。日本円で約323兆5,000億円にもなる計算です。(1ドル130円で計算。2022年以降は予測値)
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
越境ECの市場規模も中国はケタ違い。2021年の中国越境EC市場規模は1,773億ドル。日本円にして約23兆円もの流通金額を記録しています。成長率は17.4%と前年よりも鈍化したものの、まだまだプラス成長が期待できる分野であることは間違いありません。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
対日本の中国越境EC市場規模
それでは、中国越境EC市場規模における、日本の存在感はどのくらいのものなのでしょうか?
2021年に、中国ユーザーが越境EC経由で購入した日本商品の総額は、前年比9.7%増の2兆1,382億円。この数字は中国越境EC市場規模の約10%に過ぎません。
しかし、Amazonジャパンの2021年流通金額が約2兆5,000億円だったことを考えれば、中国がいかに魅力的な市場なのか理解できるはず。まだまだ市場規模に成長の余地があることを踏まえればなおさらです。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
中国越境ECへ参入する方法
魅力的な市場である中国越境ECに参入するには、具体的にどのような方法があるのか?経済産業省の調査では、以下の6つの形態を「越境EC」として定義しています。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
このうち、日本のBtoC EC事業者が、中国越境ECへ参入する主な方法は以下の4つです。
日本国内の自社ECサイトから中国へ販売
図の(1)に該当する、日本国内に自社ECサイトを構築し、中国ユーザーから受注・販売する方法です。この場合、ShopifyなどのECプラットフォームで多言語ECサイトを構築し、ユーザーへの商品配送は個別直送することが一般的。
オペレーションを大きく変更する必要がないため、中国越境ECがビジネスになるのか?試してみたいという企業に最適。近年では、海外ユーザーとの間に入って購入・配送・サポートを代行する「WorldShopping BIZ」のようなサービスも登場。これならば、ECサイトの多言語化も不要です。
一方、ビジネスとして本格的に取り組みたいのであれば、中国ユーザーに対するマーケティング活動が必須。中国から購入できる仕組みを構築しただけでは、成果を出すことは難しいでしょう。
越境ECにおすすめのShopifyについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:Shopifyで越境ECをはじめるには?おすすめの理由・事例・成功のポイントを解説!
中国の越境ECモールへ出店
図の(3)(4)に該当する、越境EC対応の中国ECモールに出店する方法です。たとえば「天猫国際(Tmall Global)」などが、外国企業の出店を受け付けている中国越境ECモールの代表例。モール自体が知名度 / 集客力を持つため、コンセプト / 商品力次第で大きな収益を上げることも可能です。
ユーザーへの商品配送は直送、または保税倉庫経由の2パターン。現地法人を立ち上げるのは難しいが、中国マーケット / 販路を拡大したい、中国でのマーケティング活動は困難といった企業に最適です。
ただし、中国のECサイト / モールの出店には規定が設けられていることに注意が必要。たとえば、企業規模、保証額など、ECサイト / モールごとのさまざまな条件が設けられているため、事前の調査・確認が必須です。
現地法人を設立して中国国内に自社ECサイトを開設
図の(6)に該当する、中国に現地法人を設立して中国国内の自社ECサイトを開設する方法です。中国ECサイト / モールの規定に制限されないため、中国でブランドを確立している企業がEC事業を柔軟に展開するのに最適。EC事業はネガティブリストの範囲外とされているため、外国企業であっても中国国内での事業展開が可能です。
ただし、外国企業に限らず、ECサイトで自社取扱商品を販売する場合は「ICP(Internet Contents Provider)」関係の手続きが必須。この手続きは、外国企業にとっては特に難しいといわれています。
現地法人を設立して中国国内のECモールに出店
そのため、現地法人を設立しても、自社ECサイトではなく「中国国内のECモールに出店」するパターンが多いようです。越境ECモールよりも規模の大きな中国国内ECモールへ出店することで、より大きな収益を期待できることがメリット。
ただし、越境ECモール同様、中国国内ECモールにも出店規定が設けられています。自社ECサイト開設に比べればハードルは低いですが、こちらも事前の調査・確認が必要です。
注意しておきたい中国越境ECの税金・物流・決済・規制
中国越境ECへの参入方法を紹介したところで、越境ECならではの注意点「税金」「国際物流」「決済」「中国の規制」について解説しておきましょう。
電商総合税 / ポジティブリストとは
電商総合税とは、一定の条件を満たした中国越境ECに適用される「税金の優遇措置」です。中国政府が2016年に導入した越境ECに関する新制度の一部であり、該当する製品には関税 / 増殖税 / 消費税などに一般貿易よりも低い税率が適用されます。満たすべき一定の条件は以下の6つ。
- 中国国内の個人消費者が購入
- 中国で登記された会社の越境ECプラットフォームを利用
- 中国国外の販売業者から購入
- ポジティブリストに掲載されている商品を購入
- 個人目的であること
- 取引 / 支払 / 物流の電子情報を税関が監督管理できること
6つの条件をクリアした場合、越境ECに適用される電商総合勢は、関税が0%、増殖税 / 消費税は法定額の70%となります。(1回の取引金額が5,000元以下、年間取引金額が26,000元以下)
それでは、電商総合勢の対象となるポジティブリストとはなんでしょう?中国政府が認証した「越境ECで輸入できる小売商品リスト」です。ポジティブリストには「原則認められていないが、例外的に認めるもの」という意味があり、リスト外商品は「なんらかの規制対象」になると考えておけば間違いありません。
2023年には、中国政府から最新のポジティブリストが公開されています。中国語にはなりますが、中国越境ECを検討している方は要チェックです。
ポジティブリスト(原文)の参照先:中華人民共和国中央人民政府
物流の直送方式 / 保税区方式とは
中国越境ECで課題になりがちな国際物流は「直送方式」「保税区方式」どちらかを選択します。直送方式とは、中国ユーザーから受注した商品を、都度、購入者の元へ郵送する方法のこと。中国国内での商品保管は不要というメリットがありますが、配送までのスピード感には欠けます。
一方の保税区方式とは、中国国内の専用保税倉庫で商品を保管し、ユーザーからの注文には国内配送で対応する方法のこと。ユーザーからの受注にスピーディーに対応できる、一括大量輸送で国際送料を抑えられるメリットがある反面、保税倉庫の保管料は負担しなければなりません。
どちらの物流方法を選択するにしても、上述した6つの条件をクリアしていれば、一般貿易に求められる検査基準を満たす必要はありません。もちろん、電商総合税も適用されるため、物流 / 税金に関する負担は大きく軽減されるでしょう。中国越境ECモール出店へ注目が高まっている理由でもあります。
キャッシュレス / デビットカード決済への対応は必須
ビジネス相手国の主な決済方法を知っておくことは越境ECの基本です。中国の場合は「キャッシュレス決済」「クレジットカード決済」「デビットカード」の3つ。特に、EC市場の成長とともに急増した決済方法がキャッシュレスです。
主流となる「ALIPAY(アリペイ)」のほかにも、いくつかのキャッシュレス決済方法があるため、複数の決済方法に対応しておくことがおすすめです。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
化粧品 / 食品などの商材は規制がある
ポジティブリスト以外の商品には、なんらかの規制があることは上述した通り。なかでも注意しておきたいのは化粧品 / 食品関連です。
たとえば、化粧品・サプリメントなどの場合、原産地証明書・成分表の提出、中国語ラベルの作成のほか、国家関連部門の許認可を事前取得する必要があります。
また、2021年4月からは、中国に食品を輸出する製造、加工、貯蔵企業に対し、企業登録を求める「輸入食品海外製造企業登録管理規定」が公布されています。対象の商品で中国越境ECへの参入を検討している企業は、充分な事前確認が必要です。
知っておきたい中国EC / 越境ECの特徴
未知の領域である越境ECへ参入する際は、どうしても実務やインフラに着目しがち。しかし、中国越境ECへのチャレンジを成功させるには、ビジネス対象国である中国市場の特徴を把握しておかなければなりません。以下から、代表的といえる中国EC / 越境ECの特徴を紹介していきます。
中国越境EC市場のシェアトップはアリババグループ
中国国内向けEC市場でも約50%のシェアを誇るといわれる「アリババグループ」は、中国越境EC市場でも大きな存在感を持っています。下図は、中国越境ECモールそれぞれの市場シェアをグラフ化したものです。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
36.8%でシェアトップなのは、アリババグループの越境ECモール「Tmall Global」、シェア2位は27.4%の「Kaola.com」でした。しかし、アリババグループは2019年にKaolaを買収しているため、実質的なシェアは64.2%になります。
スマートフォンファースト
中国越境ECユーザーの利用しているデバイスは、96%を占めるスマートフォンが圧倒的多数。47%となるノートPCとあわせ、モバイルデバイスでいつでもどこでも気軽に越境ECを利用する、中国ユーザーの特徴がわかります。
スマートフォンファーストは中国に限った状況ではありませんが、決済方法を含む「買いやすさ」を追求するためにも、スマートフォンへの最適化は必須です。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
越境ECで購入したい日本の商品
コロナ収束後に、越境ECで購入したい日本の商品はなにか?というアンケート調査の結果も紹介しておきましょう。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
1位「おもちゃ、ゲーム、アニメグッズ」2位「本、DVD / CD・エンタメ」3位「家電製品、カメラ、AV機器」と、やや意外ともいえる結果になっています。これは「越境ECを利用してでも日本の商品を購入したい理由」を反映した結果だともいえるでしょう。
私たちは「高品質」「日本ブランドへの安心」が購入したい理由だと思いがちですが、実際はそうではありません。77%と圧倒的に多かった理由は「自国で購入できない」次いで37%の「安い」でした。中国越境ECで成功するためには「海外では手に入らない日本独自の商品をリーズナブルに提供する」ことがポイントです。
中国越境EC利用者の情報源はSNS
ビジネス対象国で最適なマーケティング活動を展開するためにも、知っておきたいのがユーザーの情報源。越境ECを利用する中国ユーザーの情報源で目を引くのは、SNSや友人 / 家族からのおすすめが、無視できない割合を占めていることです。
画像出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」
これは、中国EC市場では「ニセモノ」「誇大広告」「中古品を新品表示」などの事例が少なくないため、他人の評価を参考にする傾向があるからだといわれています。SNSマーケティングで信頼感を築く、拡散することがポイントとなりそうです。
ライブコマースとインフルエンサー
越境ECを利用する中国ユーザーが口コミを重視するという傾向は、ライブコマースとインフルエンサーが圧倒的な支持を得ているという事実にも表れています。ライブコマースとは、商品紹介のライブ配信を見ながらネットショッピングする販売形態のこと。そのキーとなるのがインフルエンサーというわけです。
情報源として、アイテム / ブランドを直接検索する割合が大きいことからも、中国ユーザーは「あまり広告を信用していない」事実が伺えます。
中国越境ECへ参入する方法を紹介しました
マーケットを拡大するため越境ECに取り組んでみたい。なかでもパイの大きな中国に興味がある。しかし、越境ECをはじめる方法も中国EC市場のこともわからない。そんな企業担当者の方に向け、中国越境ECへ参入する方法を紹介するとともに、前提条件として知っておきたい中国越境ECの市場規模・特徴・注意点も解説してきました。
勝手の違う海外をビジネス対象にする越境ECは、相手国のリサーチが肝心です。しかし、迷ってばかりいるのではなく、とにかくチャレンジしてみるのも方法。幸い、対中国のビジネスに明るいECコンサル会社は少なくありません。まずは、知見のある代行会社に相談することら初めてみてはいかがでしょうか。
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