BtoB ECを成功させよう!市場規模やメリット・デメリットを紹介
BtoB企業の担当者の中には、ECを活用したいと考えている人もいるのではないでしょうか。年々BtoBのEC市場規模は拡大しているため、導入しないと売上アップの機会を逃す可能性があります。
しかし「そもそもECについての正しい理解ができていない」「EC活用でどんなメリットがあるのかわからない」という方も多いかと思います。本記事では、BtoB ECの市場規模や構築方法などを解説します。本記事を読むと、ECを導入するべきか判断できるようになります。
BtoB ECとは
BtoB ECとは、ECサイトを通じて企業間の商取引をすることです。一方でBtoC ECは、一般消費者を対象にしてインターネット上で商品を販売することを指します。
BtoC ECとの違い
BtoB ECとBtoC ECには以下のような違いがあります。
BtoB EC |
BtoC EC |
|
1回の取引量と金額 |
大量発注や高額取引が行われる |
1個単位や数百円単位から取引される |
掛率管理 |
取引条件・取引量に応じて、 取引先ごとに販売価格が異なる |
どの消費者に対しても 同じ価格で販売される |
購入フロー |
見積もりを確認し 社内の承認を得てから発注される |
消費者が購入の意思を持った場合、 すぐに注文・決済が行われる |
販売経路 |
取引先に応じて閲覧・購入 できる商品を制限する |
消費者がECサイト上の商品を 全て閲覧・購入できる |
決済の流れ |
翌月に納品済み商品の 請求をする掛け売り中心である |
クレジットカード、銀行振込、 代金引換などで決済される |
取引形態
BtoB向けのECには複数の取引形態があります。
ECサイト
ECサイトは、商品を販売する法人向けのWebサイトを構築する方法です。ECサイトに訪問したユーザーがサイト内の商品を閲覧し、必要なものを選択して発注を行います。BtoB ECを行う企業は、自社のECサイトを構築しているケースが一般的です。
EDI
EDIはElectronic Data Interchangeの略で電子データ交換を意味します。企業間取引に必要な契約書、受発注、注文書、納品書、請求書などを専用回線・インターネットを用いて電子データでやり取りするシステムのことです。
あらかじめ決められたルールや回線などにあわせて受発注が行われるため、企業間のやり取りを自動化できます。さらに紙の帳簿を作るコストや手間の削減にもつながります。
取引先と互換性がある通信システムを導入しなければならず、ECサイトよりも柔軟性がかけてしまうでしょう。
ECサイトの種類
BtoB向けのECサイトには大きく分けて2つの種類があります。
クローズドBtoB型ECサイト
クローズドBtoB型ECサイトは、既存顧客のみがアクセスできるサイトです。「特定企業と取引をしたい」「顧客別に対応したい」といったケースに使われています。
ECサイトのURLを知らないとアクセスできないため、取引がない企業はサイトを閲覧できません。サイトへのアクセスを制限できるので、受注業務の負荷を軽減可能です。
ただし、クローズドBtoB型ECサイトはアクセスするユーザーが限られることから、サイトデザインが売り手目線になりがちです。ECサイトを構築する際は、買い手にとってわかりやすい・使いやすいデザインを意識しましょう。
スモールBtoB型ECサイト
スモールBtoB型ECサイトは、小口取引を中心にした新規顧客・既存顧客すべての企業がターゲットのサイトです。検索エンジンで検索するとECサイトが表示されるため、日本中の企業がサイトにアクセスできます。過去に取引がない企業からのアクセスを期待でき、新規顧客の獲得につながる可能性があります。
必要な機能
BtoB向けのECサイトを構築する際は、BtoCとは異なる機能が必要です。商品販売を効率化するために必要な機能を把握しましょう。
機能 |
概要 |
顧客管理機能 |
顧客別に商品情報を管理する機能。 商品価格、請求先、与信管理などを行う。 |
見積機能 |
顧客別に見積書や領収書を自動発行する機能。 スムーズな取引を行うために使われる。 |
承認機能 |
取引先の担当者が設定した承認者の承認を獲得した場合のみ 商品を購入できるようにする機能。担当者の独断による注文を防げる。 |
BtoB ECの市場規模
BtoB ECの国内市場規模は以下のとおりです。
引用:経済産業省 令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書
2021年のBtoB EC市場規模は、372兆7,073億円で前年比11.3%増でした。EC化率は2017年から年々増加しており、2021年は35.6%でした。今後もBtoB EC市場規模とEC化率は増加していくと予想されます。
また、業種別の市場規模は以下のとおりです。
引用:経済産業省 令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書
2020年のEC市場規模は前年(2019年)よりも減少していますが、2021年は2019年よりも増加しています。業種別に見てみると、卸売、製造、建設の市場規模が大きく、EC化も進んでいる傾向
です。
BtoB ECの市場規模が拡大した理由
ここからは、BtoB ECの市場規模が拡大した理由を紹介します。
ITインフラの整備
企業の中には紙のやり取り・書類の郵送などの業務を効率化させるため、ITインフラを進めているケースがあります。特にEC化率が高い業種の場合は、自社でもECを活用したいと考えていることが珍しくありません。営業活動における従来のアナログ作業を減らすために、整備したITインフラを用いてECが活用されています。
働き方改革
日本では働き方改革の促進が注目されています。長時間労働や働き方などの見直しが行われるようになりました。
企業は従業員の負担になるアナログ業務を減らし、限りある人的リソースを有効活用して生産性を向上させる手段の1つとしてECが活用されています。
BCP対策
BCPはBusiness Continuity Planの略で、事業継続計画を意味します。BCPの目的は、自然災害やテロなど緊急事態に陥っても被害を最小限にして、業務を継続的に遂行することです。
例えば、企業が自然災害の影響を受けた場合、出社や取引先への訪問が困難になり、営業活動ができなくなるでしょう。そこで、インターネット上で取引ができるECサイトがあれば、自然災害や感染症の影響を受けることなく商品を販売できることからBtoB ECが注目されています。
BCP対策をすることを目的にして、ECが利用されるケースもあります。
DX推進
国内ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれるデジタル技術を活用し、業務フロー変革や新たなビジネス創出を行う取り組みが重要なテーマです。大企業や中小企業ではDXの導入が進められていますが、なかなか導入が進んでいません。
総務省が公表している我が国におけるデジタル化の取組状況によると、DXの導入を実施していないまたは今後も予定なしの割合が多い傾向です。特に中小企業ではDXを実施していない割合が68.6%あり「実施を検討している人」を含めると86.2%の割合を占めます。
ECサイトは商品の販売をデジタル化できるため、今までの業務フローの変革につながるでしょう。DX導入に向けてECの活用も手段の1つとして活用されています。
デバイスの普及
スマホやタブレットなどパソコン以外の端末が普及したことで、インターネットを利用しやすくなったこともEC市場規模が拡大した要因の1つです。スマホやタブレットなどでシステム構築や運用を行えるようになったからです。
手軽にECサイトを活用できる仕組みが整ったため、BtoB ECの市場規模が拡大しました。
BtoB ECを導入するメリット
BtoB ECを導入すると様々なメリットが得られます。
新規顧客を獲得できる
ECサイトはインターネット上に公開されます。営業担当者が直接顧客のところに訪問しなくても、インターネット上から新規顧客の集客ができます。
従来のECを活用しない営業活動は、営業担当者が足を運べる範囲が中心のため、新規で獲得できる顧客に限界がありました。
ECを活用すれば、日本中はもちろん世界中の企業をターゲットにした集客が可能です。
受注・売上の拡大につながる
ECを活用することで販売経路が拡大します。さらに、インターネットは24時間365日利用できるため、企業の営業時間に関係なく商品を販売できます。従来では逃していた顧客から受注機会が見込めるので、取引が拡大して受注や売上の増加につながるでしょう。
受注対応・問い合わせ対応を効率化できる
ECを活用するとインターネット上で商品の受注・問い合わせ業務を行えます。従来の業務フローでは電話の内容を伝票に書き起こしたり、紙・電話でやり取りをしたりすることが一般的でした。取引先とのやり取りに手間がかかってしまい、作業状況によって取引が遅延する可能性があります。
ECであれば商品の受発注・問い合わせが全てインターネット上で完結します。データの管理がしやすくなったことで、業務の効率化を実現して担当者の負担を軽減することが可能です。
また、業務を効率化すると、作業時間の短縮にもつながります。EC販売を強化したり、他の業務に集中したりするなど、リソースを有効活用しやすくなるでしょう。
人的ミスを削減できる
ECを活用しない場合、電話内容の書き起こしや目視による数字・文字の確認などが発生します。どれほど気をつけていても人力ではミスが発生する可能性があります。
ECを活用することで、インターネット上でデータを管理できるためアナログ業務の軽減が可能です。聞き間違いや誤入力などの人的ミスによる誤発注・誤出荷などを減らせる効果が期待できます。
BtoB ECを導入するデメリット・注意点
BtoB ECの導入はメリットだけでなく、デメリットや注意点も存在しています。ECを導入するなら、デメリット・注意点も把握した上で導入を検討しましょう。
導入にコストがかかる
ECサイトやシステムを構築するため、初期費用が数十〜数百万円と導入コストがかかります。ECサイトは商品の売買をするため、搭載しなければならない機能が豊富です。ECサイトの機能が多いほどコストが高額になる可能性があります。
既存顧客への対応が求められる
電話やFAXで取引をしていた企業がある場合、ECを導入することで受注フローが変更になります。既存顧客に対して説明をしなければ、変更点がわからず取引が停止する可能性があるでしょう。
ECサイトの構築に加えて、操作マニュアルの作成やデモ解説などを行いましょう。既存顧客が変更後の操作を理解しやすくなり、スムーズに取引を行ってもらえます。
社内の業務フローの見直しが必要になる
ECの導入は従来と違った社内の業務フローに変更されます。EC導入後に業務が遅延しないように社内業務フローを見直さなければなりません。スムーズに業務を行えるように、社内向けの操作マニュアルを作成して共有しましょう。
セキュリティ対策が必要になる
ECを導入するとインターネット上で顧客情報を取り扱うことになります。セキュリティ対策をしないと、悪意あるユーザーからの不正アクセスを許してしまうため、情報漏洩が発生する可能性があります。
ECを導入する際は、ログイン情報の管理やシステムのバージョンを最新にするなどの対策を行いましょう。
属人化しやすい
ECサイトには様々なシステムが搭載されています。サイトを運用するには専門知識が必要になるため、業務が属人化しやすくなっています。EC担当者が不在の場合、誰も対応できなくなるので注意が必要です。
属人化を防ぐために、操作マニュアルを作成し関係者に共有します。業務の引き継ぎができるため、誰でもサイトを運用できます。
BtoB ECを構築する方法
ここからはBtoB ECを構築する方法を見ていきましょう。
ASP型
ASPとは、Application Service Provider(アプリケーション サービス プロバイダー)の略で、Webサイトを構築するサービスです。提供元企業のシステムをレンタルする形で利用し、専門知識がなくても手軽にECサイトを構築できます。
他の構築方法とは異なり、安価な初期費用と月額料金が特徴です。ASPによって異なりますが、無料〜100円程度で導入できます。さらに、デザインテンプレートや必要な機能を選択しながらサイト構築を進めるため、構築の時間を短縮できます。
ただし、すでに用意されている機能しか使えず、カスタマイズが加えられません。ECサイトに独自システムを導入する場合には不向きです。
パッケージ型
パッケージ型はECサイト構築に必要なデザインや機能などがパッケージ化された製品を利用してサイトを構築する方法です。サーバーにソフトウェアをインストールして利用します。
基本的に標準機能を組み合わせながらサイト構築を進めますが、必要に応じて機能の追加やカスタマイズ、他システムとの連携が可能です。カスタマイズの範囲に制限はありますが、柔軟性が高いため、ある程度自由度の高いECサイトを構築したい場合に適しています。
ただし、パッケージ型の導入費用は100万以上になります。サーバーのインフラ費用に加えるとかなりの費用がかかってしまうでしょう。
クラウド型
クラウド型は、クラウド上にあるプラットフォームを利用してサイトを構築する方法です。パッケージ型のように自社でインフラ設備を用意する必要はありません。機能性やカスタマイズの自由度が高いことから、独自システムの開発にも向いています。
またクラウド型は提供元企業がシステムの管理を行っています。自動でシステムが最新の状態に保たれるため、自社でシステムを管理する手間を軽減することが可能です。
クラウド型の導入費用はパッケージ型と同程度になります。
フルスクラッチ型
フルスクラッチ型はオーダーメイドでサイトを構築する方法です。ゼロからECサイトを構築するため、自社の要望を全て反映させられます。自社のオリジナルECサイトを構築したい場合に適しています。
ただし、フルスクラッチ型はゼロから構築するので開発期間やコストがかかります。構築費用の相場は500万円以上なので、他の構築方法よりも高額です。
BtoB ECの導入を成功させるポイント
BtoB ECは工夫をすることで導入を成功させられます。
業務を明確化する
ECサイトはただ構築すればよいわけではありません。自社の業務を明確にして、どの業務をシステム化するのかを判断してから構築に取り組むことが大切です。機能の搭載漏れを防げるため、希望のECサイトを構築できます。
基幹システムと連携させる
企業の基幹システムがある場合は、ECサイトと連携させましょう。基幹システムには販売管理・在庫管理・会計などのシステムが搭載されています。ECサイトを連携させるとデータを一元管理できるため、取引や営業活動の効率化が可能です。
小さくスピードを意識して構築する
ECサイトには様々な機能が必要になり、全ての機能を搭載していると構築に時間がかかります。場合によっては実現できない要望も出てくるでしょう。
ECサイトを構築する際は、必要最低限の機能のみに絞って開発のスピードを意識しましょう。サイトを運用していく中で必要な機能を追加してみてください。
BtoB ECの事例
最後にBtoB ECの事例を紹介します。これから紹介する事例を参考に、自社での活用イメージを掴んでみてください。
株式会社ミスミグループ本社
画像引用:株式会社ミスミグループ本社
株式会社ミスミグループ本社は、総合Webカタログサイトを運営しています。金型部品や工具、消耗品などの通販・検索サイトとなっており、国内外の取扱メーカーは3,000社以上あります。
商品は1個から販売されており、17時までの注文は最短当日出荷が可能です。スムーズな配送を行ってもらえるため、急に商品が必要になっても安心できるでしょう。
サイト内の商品は誰でも閲覧できますが、注文するには無料の会員登録が必要です。会員登録が完了すると、オンライン見積もりやCADデータのダウンロードなどが行えます。
また、サイト内ではチャットで質問ができる仕組みを採用しているため、電話やメールのように利用者の負担をかけずに問い合わせできます。
モノタロウ
画像引用:モノタロウ
モノタロウは株式会社MonotaROが運営するECサイトです。製造業、工事業、自動車整備業など現場作業に必要な部品や消耗品などが2,000万点以上販売されています。
モノタロウは1回の注文が3,500円以上だと配送料が無料になります。さらに、同日中の追加注文は金額にかかわらず配送料と代金引換手数料が無料になる仕組みです。
またサイト内では定期的にキャンペーンを実施しています。通常価格よりもお得に商品を購入できるため、ユーザーからの購入を促進できるでしょう。
BtoB EC【まとめ】
ここまでBtoBのECについて解説しました。
BtoBのEC市場規模は年々拡大しており、EC化する企業も増加しています。ECを活用することで、新規顧客の獲得や売上・受注の増加などを期待できます。
これからBtoB向けのECを導入する際は、本記事を参考にしてみてください。