越境ECで化粧品の販売はできる?メリット・デメリットやポイントを紹介
化粧品EC事業を展開する企業には「なかなか売上が伸びない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そういう場合におすすめなのが越境ECです。日本の化粧品は世界的に見ても評価が高く、海外で販売することで多くの売上が見込めます。
本記事では、化粧品越境ECのメリット・デメリットやポイントを紹介します。
なお、ECサイト制作会社の探し方・選び方がわからない!という方はEC幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算に合った最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。
なぜ越境ECで化粧品が人気なのか
メイド・イン・ジャパンの代表格として、世界的に人気なのが化粧品です。日本の化粧品は品質に定評があり、多少高くても購入したいというユーザーは世界中にいるほど。とくに中国での日本ブランド化粧品は人気が高い傾向にあります。Jetro(日本貿易振興機構)が2018年に実施した「中国の消費者の日本製品等意識調査」によれば「日本から越境ECで何を購入したか」という質問では以下の結果が出ています。
- 基礎化粧品(46.9%)
- メイクアップ化粧品(46.1%)
- 食品(43.5%)
上位3つのうち、化粧品が2つも入っていることからも、人気の高さが伺えます。
化粧品越境ECではどの市場を狙うべき?
結論、なるべく大きな市場を狙うべきです。その点、アメリカと中国の存在は無視できません。経済産業省が2022年に発表した「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を見てみると、日本・アメリカ・中国の3か国間における越境ECの市場規模がわかります。
国 |
越境EC購入額 (2019年) |
越境EC購入額 (2020年) |
越境EC購入額 (2021年) |
昨対比 |
日本 |
3,175億円 |
3,416億円 |
3,727億円 |
9.10% |
アメリカ |
1兆5,570億円 |
1兆7,108億円 |
2兆409億円 |
19.30% |
中国 |
3兆6,652億円 |
4兆2,617億円 |
4兆7,165億円 |
10.70% |
(参照元:経済産業省)
表を見てみると、購入額がアメリカと中国が日本を大きな差があり、市場規模はアメリカで約6倍、中国にいたっては10倍以上も変わります。
爆発的な市場規模を誇る中国
中国は膨大な人口と高い購買力を持ち、日本製品に対する安全性やクオリティを評価する消費者が多くいます。越境ECでの購入額は、中国が3か国で群を抜いているのがわかるように、巨大市場といえるでしょう。さらに、日本の化粧品ブランドに対する関心の高さも考えれば、越境ECで中国を外すのは難しいといえます。
やはり外せないアメリカ
中国ほどの市場規模ではないものの、やはりアメリカはターゲットとして魅力的です。昨対比だけを見れば市場成長率は中国を凌ぎます。また、アメリカの人口推移に目を向けると、右肩上がりで増え続けており今後の伸びしろも期待できるでしょう。さらに世界的な流行の中心を担っているため、爆発的に認知が広がるチャンスもあります。
東南アジアも狙い目
近年、東南アジアは多くの日本企業から注目を集める市場です。ショッピージャパン株式会社が行った調査によれば、「東南アジアへの関心がある」と答えた企業は全体の52.3%とのこと(調査対象は北米で越境ECを行っている企業の担当者111名)。その理由としては、
- 中長期的な購買層の増加が期待できる(65.1%)
- 成長市場であり、新しい消費者にアプローチできる(62.3%)
- 物流コストが低い(55.7%)
などが挙げられています。また「実際に東南アジア市場への参入予定がある」の質問には85.8%の企業が「ある」と回答しています。
越境ECのメリット
越境ECにはどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
越境EC市場規模は中長期的に拡大傾向にある
グローバリゼーションの広がりによって、越境ECの市場規模は年々拡大傾向にあります。消費者は、自分の望むものを海外から自由に購入できるようになったからです。この背景にはインターネットやスマートフォンの普及、物流システムの充実が挙げられるでしょう。
また、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)や東南アジアを中心とした発展途上国の急速な経済成長は、EC市場の拡大を今後も後押しすると考えられています。
低コストかつ低リスクで始められる
越境ECでは実店舗を構える必要がなく低コスト・低リスクで事業をスタートできるという利点があります。小売事業の場合、実店舗かECサイトのどちらかがないと始められません。実店舗を構えようとすると、それだけで数千万円単位の初期投資が必要なだけでなく、店舗スタッフも揃えなくてはいけません。
その点、越境ECで必要なのはECサイトの出店料や在庫を抱える倉庫、最低限の人員がいれば運営可能です。
もし、人員が足りない場合はEC事業をサポートしてくれる業者を使うという手もあります。
海外は単価・購入頻度が高い
外国人は日本人よりもオンラインショッピングの利用率が高いため、より多くの売上が期待できます。株式会社ジグザグが2023年に実施した「越境EC利用に関するアンケート」によれば「外国人旅行客は、訪日後は日本商品の購入意欲が向上する」という結果が出ています。
新型コロナウイルスによるパンデミックの前は、中国人による「爆買い」が度々ニュースに取り上げられました。日本製品の品質が認められている証拠の1つです。また、中国に限らず外国人旅行客は日本を訪れたあとも、気に入った商品があれば帰国後もオンラインで買い求める傾向があります。
越境ECのデメリット
反対に越境ECのデメリットを見ていきましょう。
手続きが煩雑
国内ECと比較すると、越境ECは関税や輸送など様々な手続きが必要である分、煩雑といえます。ほかにもECサイトでの商品の説明を翻訳したり、必要に応じてラベルを張り替えたり決済方法が異なるなど、販売する国にあわせた対応をいくつもしなくてはいけません。
とくに、化粧品は人体に影響を与える可能性がある商材です。国によっては規制の対象になっていることがあります。たとえば、アメリカでは「FDAルール」と呼ばれるガイドラインがあり、アメリカ市民が消費する食品、飲料、化粧品などに厳格なルールを設けています。ルールは国によって異なりますので、どこで販売するかによって調査が必要になるでしょう。
日本国内と同じ手法では売れない
国外でビジネスをする場合に、忘れてはいけないのが文化や宗教、習慣。日本人とは考え方や生活習慣が異なる消費者を相手にするということは、戦略も個別に変更しなくてはいけません。
たとえば、日本人は美白をよしとしますが、西洋人は日焼けした健康的な肌が好まれます。ほかにも、最近ではオーガニック、SDGsなどをコンセプトにした製品の需要も高まっています。進出する国・地域では何が受け入れられているのかはしっかり把握しておきたいところです。
越境ECでのポイント
少しでも勝率を上げるために、成功のポイントを見ておきましょう。
輸出許可証を申請しなくてはいけない
越境ECには輸出許可証が必要なケースがあります。
具体的にはEU加盟国なら「EU化粧品規則」、ASEAN加盟国なら「ASEAN化粧品指令」があるなど、国のルールに従った申請手続きが必要です。
中国の場合は輸出許可証が現状不要ではあるものの、NMPA申請(旧CFDA申請)が必要です。NMPA申請(旧CFDA申請)は中国EC法で定められていて、中国国内でEC販売に従事する事業者が対象となります。内容としては、化粧品に定められた基準の成分であるか、ラベル表記がルールに則しているかといったものです。
消費が活発になるイベントをおさえる
日本国内でいえば、クリスマス商戦でセールや新製品の発売が活発になるように、国ごとの商業イベントをおさえることは重要です。たとえば、アメリカでは「ブラックフライデー」に消費が一気に伸びますし、中国では「独身の日」が該当します。
こういったイベントは消費者の注目度も高く、財布の紐が緩くなるため売上を伸ばすポイントになります。何も知らずにECサイトを営業していても売上は伸びないのでしっかりチェックしておきましょう。
国ごとのマーケティング施策を考える
越境ECでは、商材を用意してECサイトに商品ページを作れば勝手に売れるわけではありません。よほど有名な商品であれば話は別ですが、ほとんどの商品はマーケティング戦略を練っておかないと、消費者の目に留まらない可能性のほうが高いでしょう。
代表的な施策でいえば、SEO(検索エンジン最適化)が挙げられます。SEOは、検索結果で上位に表示されやすいようにコンテンツを最適化する施策です。ほかにも、中国ではSNSなどのライブ配信で商品を販売する「ライブコマース」も活発です。
翻訳の質は売上に直結する
売上を伸ばそうと思ったら、翻訳の質にはこだわりましょう。日本語が怪しいECサイトからは、商品の購入をためらう人がいるように、ネイティブでない人が作ったとわかるECサイトは離脱される恐れがあります。近年では自動翻訳のレベルも上がってきてはいるものの、まだまだ細かい部分まで納得のいく翻訳は難しいでしょう。
自動翻訳ではなく、プロの翻訳家に紹介文を依頼すれば、説得力が増して購入につながりやすくなります。
主要決済方法をカバーしないと売れない
ECでは、普段から慣れ親しんだ決済方法が利用できないとカゴ落ち(決済直前での離脱)につながります。日本ではクレジットカード払いや銀行振込などの決済方法が主流ですが、アメリカではクレジットカード払いのほかにはペイパルが人気の決済方法です。ほかにも台湾ではコンビニ決済利用者が多い、中国ではモバイル決済が多いなど国によって好まれる決済方法の特徴が異なります。
進出する国を決めたら、主要決済方法を調べて自社のECサイトで利用できるようにしておきましょう。
取引国にあわせた税務処理に対応する
日本に限らず、世界中の国では輸入されてくる商品に関税を課しています。一部の例外はありますが、越境ECをするのであれば国にあわせた税務処理は必須といえます。
税務処理が適切に行われていないと通関で必要以上の時間がかかる、または商品が通関できずに拒否される恐れも。売約済みの商品を発送する場合、スムーズに通関できなければ消費者に不信感を与えてしまうため、税務処理は確実に行える体制を整えることが重要です。
可能であれば、専門家に依頼することも考えましょう。
輸送コストと保管コストを見極める
売れた商品を国内から発送するか、販売国から発送するかはコスト面で大きな差を生みます。たとえば、日本国内から発送するのであれば、自宅を倉庫代わりにすれば保管コストはほとんどかかりません。しかし、個別に発送する分、輸送コストは割高になります。
一方で販売国から発送する場合は、商品を保管するために倉庫を借りる必要があります。そのかわり、商品が消費者に届くまでのリードタイムは圧倒的に短縮されるでしょう。商品をまとめて輸出すれば、輸送コストの節約にもつながります。
どちらがいいのかは戦略によって変わってくるので、しっかり見極めることをおすすめします。
越境ECで知っておきたい申請・認証
ここでは、中国とアメリカで化粧品の越境ECをする場合に知っておきたい申請・認証をご紹介します。
【中国】NMPA申請(旧CFDA申請)
中国に化粧品を輸出するのであれば、知っておきたいのがNMPA申請(旧CFDA申請)です。NMPA申請は化粧品・医薬品・医療機器を中国に輸出する事業者は、NMPA (中国国家薬品監督管理局)の行政認可を取らなくてはいけないというもの。
申請には以下の項目に注意が必要です。
- 申請書類は用意されていること(製造工場、原料メーカーの協力が必要)
- NMPA申請適格者であること
- 中国国内で許可された成分であること
- 中国国内に登記された「境内責任者(協力企業)」がいること
- サンプル検査は実施されているか
- 中国での分類が「化粧品」に該当すること
見ればわかるように、非常に複雑かつ難解であるため、素人が自力でNMPA申請をするのは難しいでしょう。申請する際には、専門の業者に依頼したほうがスムーズに進みます。
【アメリカ】FDAルール
FDA(アメリカ食品医薬品局)ルールとは、アメリカ国内で食品・飲料・化粧品などを流通させる場合に必要な認証手続きです。対象となる製品は多岐に渡りますが、化粧品に限っていえば「一般化粧品」「薬用化粧品」の2つの分類が存在します。このうち、FDAルールが適用されるのは薬用化粧品のみです。一般化粧品についてはFDAの取得義務はありません。
FDA認証を取得するには以下の手順が必要です。
- アメリカ国内の代理人(企業または個人)の指定
- 製品ラベルの英語化
書類としては「成分リスト」と「製品ラベルのデータ」が必要(ともに英語表記であること)です。FDAにおいても申請代行業者を活用したほうが、スムーズに手続きできるでしょう。
越境ECで出店する2つの方法
越境ECを始めるにはECサイトを用意しなくてはいけません。ここでは2つの方法をご紹介します。
自社サイトを構築する
自社サイトのいいところは、自由にカスタマイズできる点です。自社ブランドにあったデザインやUIを設置でき、ファンを獲得しやすいのが特徴。一方で、構築には相応の費用がかかるため、予算を確保できていない場合はおすすめできません。
構築方法としては、自社スタッフだけで開発するか、制作会社に依頼するの2つがありますが、どちらにしても開発費と開発期間は必要です。越境ECサイトを構築に興味がある場合は以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:越境ECにも対応しているおすすめのサイト構築会社7選!
モールに出店する
モールとは、色々なお店が集まっているECプラットフォームのこと。日本でいえば、楽天やYahoo!ショッピング(Paypayモール)が該当します。アメリカではAmazonやWalmart、中国でいえばアリババが有名です。
モールのメリットは集客力が高い点と、すぐにお店を持てる点です。有名なモールは何百万人というユーザーが日々集まるため、露出する機会が自然と増えます。ただし、毎月出店料を支払う必要があるのと、売上の数%を手数料として取られるのがデメリットです。
越境EC化粧品販売・成功事例
最後に、化粧品の越境ECで実績のある事例をご紹介します。
20~30代女性から圧倒的な人気「SK-Ⅱ(エスケーツー)」
(画像引用元:SK-Ⅱ)
日本を代表するスキンケアブランドの1つが「SK-Ⅱ(エスケーツー)」。意外にもアメリカのP&Gが運営しています。中国では高級化粧品ブランドとしての地位を確立しており、ブランディング戦略にも力を入れていて、CMでは人気の男性タレントを起用して話題を呼びました。
ECサイトでは単品販売だけに限らず、ライン使い用にセットで売ることで、客単価を上げながら多くの中国人ファンを獲得しています。
世界51カ国への販売実績を誇る「ライスフォース」
(画像引用元:ライスフォース)
薬用化粧品として世界51か国への販売実績を誇るのが「ライスフォース」です。30~50代の女性をターゲットにFacebook広告を使った戦略で国内人気を獲得しました。海外では、世界中のホテルやスパのアメニティとして商品を提供し、着実に認知を強化。
さらに、現地の実店舗および越境ECサイトでも販売しています。越境ECでは多言語化にも力を入れており、SNSを組み合わせたマーケティングで相乗効果を狙っているのが特徴です。
メンズスキンケアブランドも注目「BULK HOMME(バルクオム)」
(画像引用元:BULK HOMME)
化粧品というと、つい女性をターゲットにした商品を思い浮かべがちですが「BULK HOMME(バルクオム)」はメンズスキンケアブランドとして成功を収めています。2013年の創業以来「世界No.1 メンズスキンケアブランド」を目指し、積極的に海外展開を進めてきました。現在では、欧米だけでなくカザフスタンや中国など世界10か国に展開するブランドへ成長しています。
とくに、アメリカでは認知が低いこともあり、大手ECモールであるAmazonで越境ECを開始。着実にファンを増やしています。
化粧品の越境ECについてメリット・デメリット、ポイントを解説しました
日本の化粧品は、世界的にも人気の商品であり越境ECで海外に販売するのに適しています。しかし、越境ECにはルールや商習慣の違いなどさまざまな点が日本とは異なります。越境ECにチャレンジしようと考えているのであれば、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
なお、ECサイト制作会社の探し方・選び方がわからない!という方はEC幹事にお気軽にご相談ください。貴社の目的・予算に合った最適な会社を厳選してご紹介します。相談料・会社紹介料などは無料です。