自社ECとは?メリット・デメリット・ECモールとの違い・成功のポイントを解説!
本格的にネットショップを運営するなら、自社ECの開設がおすすめだと聞いた。それはなぜ?どんなメリットがある?自社ECとは?ECモールやECサイトとなにが違う?
そんな疑問を持つ企業担当者の方に向け、メリット・デメリットから、ECモールとの違い、成功のポイントまで、自社ECとはなにかを解説していきます。
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自社EC / ECサイトとは
自社ECとは、自社で取得した独自ドメイン(インターネット上の住所に該当)を使って構築・運営されるネットショップ / ECサイトのこと。それぞれ異なる住所を持つ、独立した路面店が自社ECのイメージです。住所の異なる路面店のように、従来の自社ECは、それぞれ個別にECサイトを構築するものでした。
しかし、手軽に利用できるECサイト構築サービスが多数登場した現代では、自社ECにチャレンジしやすい環境が整っています。ECサイト構築サービスとは、自社EC構築に必要な機能を網羅したプラットフォームのこと。個別店舗を建設するのではなく、マンションの一室に店舗を開業するイメージです。
また、本来のECサイトは「電子商取引(EC)機能を持つWebサイト全般」を意味しますが、一般的には自社ECを「ECサイト」と呼びます。
ECの基礎知識については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ECとは?意味・概要・EC通販ビジネスの消費者メリット・事業者メリットを解説!
自社ECとECモールの違い
自社ECが独立した路面店だとすれば、ECモールは文字通り「大型ショッピングモール」のイメージ。現実のショッピングモールと同様、ECモールの用意したプラットフォームを利用し、EC事業者がテナントを出店、商品を出品する形です。
「楽天市場」「Amazonマーケットプレイス」「Yahoo!ショッピング」が、国内の3大ECモールだといわれています。
画像出典:楽天市場
ECプラットフォームを利用する自社ECもあるのでは?と、疑問を感じたかもしれません。しかし、ECモールでは「独自ドメインを使えない」ことも含め、自社ECとはさまざまな違いがあります。自社EC、ECモールの主な違いは以下の通り。
自社EC |
ECモール |
|
運営の主体 / システム保守 |
自社 |
ECモール |
ドメイン(URL) |
独自ドメイン |
ECモールのドメイン |
初期費用 |
無料〜数百万円 (利用するプラットフォーム、 カスタマイズ度合いによる) |
安価 |
ランニングコスト |
サービス利用料、システム運用 / 保守費用、 決済手数料など (利用するプラットフォームによる) |
出店料、システム手数料、 サービス利用料、販売手数料など |
ECモールについては以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ECモールとは?特徴・種類・自社ECサイトとの違い・主要ECモールを紹介!
ECモールと比較した自社ECのメリット
それでは、なぜ本格的にネットショップを運営するのに「自社EC」がおすすめなのか?自社ECを構築・運営するメリットを、ECモールと比較しながら解説していきましょう。
デザイン / 機能でショップの独自性をアピール
構築方法や利用するサービスによるものの、自社ECはデザインカスタマイズや機能追加の柔軟性が高いため、ショップの独自性をアピールしやすいメリットがあります。自社のコンセプトをショップデザインに反映させ、他社と差別化を図る。在庫管理などの基幹システムを連携させ、自社ECと実店舗の運営を統合するなどが可能です。
自社ECに対するECモールの場合、デザイン / 機能ともにモールが提供するプラットフォームで許された範囲内でのカスタマイズに制限されます。同じECモール内に競合他社が出店していれば、差別化を図るのは難しいといわざるを得ないでしょう。
柔軟なマーケティング施策 / ブランディング
デザイン / 機能の柔軟性 / 拡張性に優れる自社ECは、柔軟なマーケティング施策 / ブランディングを展開していくための最適な選択肢です。実店舗を含むオムニチャネルの中核として自社ECを活用する。ブランドイメージを重視したデザインを採用するなど、目的に応じたさまざまな展開が考えられます。
デザイン / 機能に制限のあるECモールでは、こうはいきません。モール全体でセール / キャンペーンを開催することはありますが、独自企画やマーケティング施策を実施するのは困難です。
顧客データの収集・活用
独自ドメインで運用する自社ECは、顧客データを自由に収取・活用可能なメリットがあります。アクセス経路、デバイス、離脱した箇所、よく読まれているコンテンツなど、サイト内でのユーザー行動を可視化できるため、自社ECを改善するのに有効。収集・分析したデータはリピーター獲得にも役立ちます。
一方、ECモールの場合、収集されたデータは原則としてECモール側が管理します。出店している事業者に提供されるデータは大幅に制限されてしまうため、データを根拠にした顧客への個別アプローチは困難です。
利益を確保しやすい
自社ECは、ECモールより利益率を確保しやすいというメリットもあります。なぜなら、ECモールでは「販売された商品に対して一定料率の手数料がかかる」ことが一般的だから。手数料のかからない自社ECならば、同じ価格で商品を販売しても、利益率を高めやすいということです。
利益率を確保しやすいもう一つの理由は、自社ECなら独自性 / ブランドという付加価値を考慮した価格設定が可能なこと。差別化が難しく、競合他社の多いECモールが「価格競争」になってしまいがちなのとは対照的です。
ECモールと比較した自社ECのデメリット
メリットを活かすためにも、自社ECを構築・運営する上での注意点、デメリットを知っておくことが肝心です。ECモールと比較しながら簡単に解説していきましょう。
自社EC構築・運用のハードルはモールよりも高い
デザイン / 機能カスタマイズの柔軟性に優れる自社ECは、ECモールよりもサイト構築のハードルが高い傾向にあります。
SaaS型のEC構築プラットフォームが登場したことにより、ドラッグ&ドロップでデザインを、アプリやプラグインで機能追加をできるようにはなりました。しかし、デザインを作り込みたい、独自機能を追加したい場合は、コーディング / プログラミングの知識・スキルが求められます。
また、カスタマイズ部分に関しては自社管理の範疇となる自社ECは、システム運用という点でもECモールより専門性が求められるといえるでしょう。オープンソース、パッケージ、フルスクラッチで自社ECを構築するなら、サーバを含むインフラも用意・管理しなければなりません。
自社ECの集客は難しい / 成果が得られるまで時間がかかる
ECビジネスを成功させるために必要不可欠な要素が集客。しかし、ECモールと異なり、自社ECの集客は簡単ではありません。なぜなら、それ自体が集客力を持つECモールへ出店するのと異なり、自力で集客しなければ「自社ECにはだれも訪問してくれない」から。訪問者が回遊することで、自社への露出が増えるECモール出店とは対照的です。
また、自社ECへ集客するには、大きく「即効性はあるが費用がかかる」方法と「費用は抑えられるが成果を得られるまでに時間がかかる」方法があります。基本的に、それぞれを組み合わせて実行しますが、自社ECへの認知が高まり、売上につながるまでには相応の時間が必要です。
自社ECへの集客方法について、詳しくは以下記事もあわせてご覧ください。
関連記事:自社ECサイトへの集客方法|集客の基本・具体的な方法・成功のポイントを解説!
自社ECの購入率はモールよりも低め
自社ECの購入率は、一般的に約1〜2%程度だといわれています。これは、約5%程度の購入率となるECモール出店と比較した、自社ECのデメリットだといえるでしょう。購入率とは、サイトを訪問したユーザー数に対し、何人のユーザーが購入までにいたったかの割合です。
これは、ECモールの訪問者が「ショッピングを前提」としているのに対し、自社ECは必ずしもそうではないからだと考えられます。ほかにはない商品を扱い、購入率が優秀といわれる自社ECでも約3%程度。改善していくための施策を講じたとしても、ECモールの購入率に匹敵させるのは困難です。
自社EC / ECサイトの構築方法 / 費用感
自社ECとはなにか?概要、ECモールとの違い、メリット・デメリットを把握できたところで、自社ECの構築方法を紹介していきましょう。
自社ECは主に5つの構築方法があり、それぞれ特徴、カスタマイズの自由度、費用感が異なります。以下から、それぞれを簡単に解説していきます。
自社ECの構築方法 |
カスタマイズ性・自由度 |
費用感 |
無料 / 有料ASP |
低:提供されるサービスの範囲内 |
初期費用:無料〜数万円 月額費用:数千円〜2万円前後 |
オープンソース |
中:プラグインで機能拡張可能、 カスタマイズには プログラミングスキルが必要 |
プログラム自体は無料 レンタルサーバ:月額数千円〜数万円 |
クラウドEC |
中:アプリ / オプションで機能拡張可能、 カスタマイズには プログラミングスキルが必要 |
初期費用:無料〜10万円以上 (プラン / カスタマイズの 程度による) 月額費用:5,000円〜20万円 |
パッケージ |
高:独自カスタマイズに対応 |
パッケージ費用:150万円〜 サーバ:導入形態による |
フルスクラッチ |
もっとも高い:事実上の制限なし |
開発費用:500万円〜 サーバ:導入形態による |
ASP
ASPとは、Application Service Providerの略称です。その名の通り、サービスプロバイダーがクラウド環境に用意したEC構築プラットフォーム(アプリケーション)を利用し、自社ECを構築する方法。無料で使えるサービス、あるいは無料プランが用意されているサービスもあり、販売した分の手数料だけでECビジネスをスタートさせることも可能です。
テンプレートをベースにしたデザインカスタマイズや、オプションによる機能追加も可能ですが、カスタマイズの自由度はサービスの提供する範囲内に限られます。低コストで利用できるため、はじめて自社ECにチャンレンジする個人 / 法人におすすめ。高機能な有料ASPは、大手企業から利用されることもあります。
オープンソース
オープンソースとは、ソースコードが公開されているプログラムを利用して自社ECを構築する方法のこと。EC-CUBEがオープンソースの代表例であり、プログラム自体はだれでも無料で使えます。プラグインを追加して機能を拡張したり、自由にカスタマイズできることもオープンソースの特徴です。
ただし、ASPのように動作環境は用意されないため、サーバ / ネットワークを含むインフラ環境を自社で用意する必要があります。カスタマイズにはプログラミングの知識が必要なことも注意点。低コストで自社ECを構築したい、ITリソースを持つ企業におすすめです。
クラウドEC
クラウドECとは、ASPと同様、ベンダーがクラウド環境に用意したEC構築プラットフォームを利用し、自社ECを構築する方法のこと。ASPとの違いは曖昧ですが、一般的には、より拡張性 / 柔軟性の高いサービスをクラウドECと呼びます。たとえば、機能を拡張できる8,000種類以上のアプリが用意されている「Shopify」がクラウドECの代表例です。
クラウドECは、ASPとパッケージ双方のメリットをあわせ持つ特徴があるため、幅広いニーズに対応可能です。たとえば、最小機能で自社ECをスタートさせ、成長にあわせてサイト規模や機能を拡張したい企業などにおすすめ。代表例であるShopifyであれば、越境ECにチャレンジしてみたい企業にもおすすめです。
パッケージ
パッケージとは、ECサイト構築用のソフトウェア・パッケージを利用し、自社ECを構築する方法のこと。パッケージを購入した企業にあわせた独自カスタマイズに対応するなど、拡張性 / 柔軟性に優れることが特徴です。動作環境を自由に選べることもポイント。AWSに自社ECを構築し、繁閑期に応じてリソースをスケーリングするなども可能です。
一方、柔軟性に優れる分、構築・運用費用は高額。開発 / カスタマイズに時間を要するため、自社ECを開業するまで半年程度かかることもあります。年商5億円を超える規模のECサイトを運営する、基幹システムとシームレスに連携したいなど、パッケージでしかできないニーズのある企業におすすめです。
フルスクラッチ
フルスクラッチとは、自社ECをゼロから開発 / 構築する方法のこと。そのため、既存プログラムの制限に縛られることなく、ITで実現できるどのような自社ECも構築できます。一方で、構築・運用にかかる費用はもっとも高額。自社ECオープンまでの期間ももっとも長くなります。
既存のプラットフォームでは実現できない独自のECビジネスを展開したい、年商50億円を超える大規模企業などにおすすめです。
自社ECサイトの作り方については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:ECサイトの作り方|作り方の種類・特徴・費用感・選び方・開業手順を解説!
自社ECを成功させるためのポイント
自社ECの主な構築方法を解説しましたが、サイト構築自体はそれほど難しいものではありません。これは、各EC構築プラットフォームサービスの高機能化が進み、デザインの優れた高機能自社ECを簡単に構築できる環境が整っているからです。
むしろ、自社ECを構築することよりも、自社ECを成功させるにはどうすべきかを考えることが重要です。以下から、自社ECを成功させるヒントとなるポイントを解説していきましょう。
コンセプト / 商材
自社ECのコンセプト、取り扱い商材を明確にし、自社ECのメリットである独自性をアピールしましょう。コンセプトとは、だれになにを販売するのか、どのような価値をユーザーに提供するのか、ショップとしての一貫した方針のことです。どんなにデザインが優れていても、機能が豊富でも、ユーザーが「買いたい」と思わなければ売れません。
ユーザーが買いたいと思う「モノ・サービス」があり、買ってよかったと感じる「魅力」が必要です。それがコンセプトであり商材。これが明確になっていれば、適切な構築方法を選ぶことも、自社ECを運営していく戦略を立案することも容易です。
集客 / 購入までの導線
自社ECに必須の集客施策、ユーザーが購入にいたるまでの導線設計を徹底して実行しましょう。上述したように、自社ECへの集客は簡単ではありません。Web広告、SEO対策、SNSマーケティングなど、自社ECへの集客方法はさまざまですが、ターゲットを定めて複数の方法を使い分けていくことがポイント。そのためにもコンセプトの明確化が必須です。
また、集客しただけでは売上につながらない可能性があることにも注意しましょう。最短距離で購入できるように導線が設計されていなければ、せっかく訪問してくれたユーザーを取り逃すことになるからです。導線が最適化されていれば、購入率を高めることも可能。集客との相乗効果で売上を拡大できます。
自社ECサイトの集客については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:自社ECサイトへの集客方法|集客の基本・具体的な方法・成功のポイントを解説!
リピーターの獲得
新規ユーザーの集客は非常に重要ですが、既存顧客のリピーター化を忘れてはいけません。なぜなら、継続的 / 断続的に商品を購入してくれるリピーターは、自社ECの売上ベースを作ってくれる優良顧客だからです。
自由度の高い自社ECは、リピーター獲得に向けた施策を展開するのにも最適。メルマガ配信、ポイント / クーポンの活用、アップセル / クロスセルなど、取得した顧客データをもとにした精度の高い施策を実行できます。
ECモールとのマルチチャネル展開がおすすめ
ECサイト、実店舗、カタログなど、あらゆる顧客接点(チャネル)を統合した販売戦略「オムニチャネル」が注目されているように、販売チャネルの増加は非常に有効。つまり、自社ECだけでなく、ECモールも活用したマルチチャネル展開がおすすめです。
そもそも、本記事での解説でもお分かりのように、自社ECのメリット・デメリットはECモールと表裏一体。マルチチャネル展開することで、それぞれのデメリット面を補えるだけでなく、戦略によっては相乗効果も期待できます。
参考になる自社ECサイトの成功事例
最後に、自社ECを構築 / 運営していく上で参考になる成功事例を紹介しておきましょう。1つは、オムニチャネル戦略の活用例である「JINS」、もう1つは、口コミ / SNSマーケティングの成功例である「SOULfitwear」です。
JINS
画像出典:JINS
「JINS」は、自社ECのポテンシャルをフル活用したEC戦略を展開することで知られる、株式会社ジンズのアイウエアブランドです。基本となるのは、実店舗とシームレスに連動するオムニチャネル戦略。デジタル技術を応用したさまざまなEC戦略を展開しています。
たとえば、顔を撮影するだけでメガネを試着できる公式アプリ「JINS BRAIN2」は、AIがお似合い度を判定。また、LINE公式アカウント、ミニアプリなどでユーザーの利便性を高め、気軽にオンライン購入できる環境を構築しています。「JINS MEGANE STYLE」「JINS WEEKLY」など、ブランド価値を高めるコンテンツ配信にも力を入れています。
SOULfitwear
画像出典:SOULfitwear
「SOULfitwear」は、現役のスノーボードクロス日本代表、鈴木瑠奈氏が立ち上げたフィットネスウェアブランドです。商品企画から梱包まで、鈴木氏のみで賄っていたEC事業でしたが、運営メンバーを増やす必要に迫られるなど、想定以上のスピードで成長中。その秘密は、ブランド立ち上げのキッカケとなった「クロスフィットコミュニティ」の存在です。
鈴木氏がSOULfamilyと呼ぶコミュニティの方は、ブランドのコンセプトや価値観に強く共感してくれたクロスフィットジムの仲間たち。一人ひとりがインフルエンサーとなり、Instagramや口コミで評判を広げてくれました。SNSマーケティングが非常に有効な、現代ならではのサクセスストーリーです。
Shopifyで構築された自社EC事例については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:Shopify事例12選|オンラインビジネスへの導入効果を業種別に紹介!
自社ECのメリット・デメリット・ECモールとの違いを紹介しました
本格的にネットショップを運営するなら、自社ECの開設がおすすめだと聞いた。それはなぜ?どんなメリットがある?自社ECとは?ECモールやECサイトとなにが違う?そんな疑問を持つ企業担当者の方に向け、メリット・デメリットから、ECモールとの違い、成功のポイントまで、自社ECとはなにかを解説してきました。
独自性をアピールでき、戦略面での自由度が高い自社ECは、本格的なネットショップ運営に最適です。ただし、商材や運営方針によっては、自社ECが最適とはいえない場合もあります。サービスの選定やコンセプト / 戦略立案に迷ってしまうようなら、ECビジネスに法な知見を持つ制作会社、コンサル会社に相談してみるのも方法です。
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